エレミヤ書23 章1-6 節
災いだ、わたしの牧場の羊の群れを滅ぼし散らす牧者たちは。(エレ23:1)
エレミヤ書23 章は、「バビロン捕囚」すなわちユダ国の滅亡の「前夜」のタイミングで語られた預言です。「怠惰な牧者たち」によって散らされてしまうあわれな羊の群れに、ユダの民衆が譬えられています。その時代(B.C.7 世紀後半)は激動の時代でしたが、その激動ぶりを下記に記してみます。
永年メソポタミアからエジプトまでを支配領域としたアッシリア帝国が、新興勢力によって四方から攻められ、勢力をもぎとられはじめます。北からはスキュティア人の侵入、東からはメディア王国の攻勢、南からはカルデア人(後の新バビロニア)の反乱、リディア・エジプト連合の遠征、と「四面楚歌」の状態に陥ります。全方位防衛に力を削がれるアッシリアは、殖民地の運営に手が回らなくなりますが、その時代にユダ国ではヨシヤ王の宗教改革と独立運動が起こるわけです。ユダ国が独立気運を一時的に謳歌できたのは、アッシリアの弱体化と関係がありました。アッシリアは、新興国バビロニアに敗北しB.C.609 年に滅びます。ただ、新覇者となったバビロニアはメソポタミア地方の平定に集中しており、そのすきにエジプトがパレスチナ地方を手中にしていきます。
ヨシヤの息子たち(ヨアハズとヨヤキム)の時代は、エジプトの猛烈な干渉支配に苛んだ時代ですが、B.C.605 年にエジプトが新バビロニアとの局地戦に敗北したとたん、ヨヤキムは新バビロニアに寝返り、貢ぎ物を捧じ、進んで属国となります。ところが別の局地戦でエジプトが勝利すると手のひらを返して再度エジプトに寝返る、というふうに揺れるのです。彼は、ユダ内部の親バビロニア派によって暗殺されてしまいます。王位は息子ヨヤキンに引き継がれますが、就任3 ヶ月後にバビロニアはユダ国に攻め込み、エルサレムを開場させ、ヨヤキン王を始めユダの主だった人々をバビロンに集団連行していきます(第一次バビロン捕囚)。バビロニアの後押しで即位したゼデキヤでしたが、バビロニアに反発する他の小国たちと連合してバビロニアに反乱を企て、その結果、完膚なきまでに敗北し、エルサレムは陥落してしまうのです(B.C.587 第二次バビロン捕囚)。
自国を取り巻く国際的な対立・紛争状況の中をどう立ち抜いていくのか。何を政治哲学とし、どう戦争を回避するのか。戦争に加担せずにどう自国民のいのちと暮らしを守るのか。それを政治と呼び、外交と呼びます。本日は衆議院選挙投開票。日本の有権者たちは、「羊の群れを滅ぼし散らさない」牧者たちを選ぶことができるでしょうか。吉髙叶