2024年8月4日礼拝「逃げだし、川を渡り」

創世記31 章17-21 節

ヤコブはこうして、すべての財産をもって逃げ出し、川を渡りギレアドの山地へ向かった。(創31:20)

ヤコブの波乱に満ちた物語はハランに場所を移します。リベカの兄(ヤコブにとっては叔父)ラバンがハランに住んでおり、なんとかたどり着きます。ハランはヤコブの祖父アブラハムがカナンに向かって出発した土地でもあります。物語としてはとても興味深い設定です。祖父がたどった道の逆を彼が行くのです。そしてイサクとリベカが出会った場所と同じ「井戸端」でヤコブとラケルは出会います。リベカの時とは違ってラケルは一言も話さず、能動的に動くのはヤコブです。そしてラバンに「妹の息子」と認められ、そこで働くことになります。ラバンは「ただで働くことはない」と報酬を約束します。そこでヤコブは「ラケルを」くださいと言います。でもラバンは夜の闇にまぎれて上の娘であるレアを送ります。それがわかって、ヤコブは怒りますが、その後すぐにラケルも妻として迎えることができます。レアが妻となるまでに7 年、2 人と結婚し、その後ラケルのために7 年、そして財産のために6 年。計20 年、彼はラバンのもとで過ごすのです。またヤコブは13 年の間に13 人の子どもの父親になります。一人の「女の子」と12 人の「男の子」の父親になるのですが、この12 人の「男の子」の名前はイスラエルの土地の名前と同じです。つまり、この物語もまた、1 つの民族にとっての「原因譚」であることが示唆されます。
そして、今度は家畜の話が始まります。「独り立ち」を願ったヤコブに対して、まだここにいて欲しいラバンが「報酬をはっきり言いなさい。必ず支払うから」と伝え、結果的に「ヤコブはますます豊かになり」家畜・奴隷・ラクダやろばなどの財産を得たというふうに物語は展開していきます。ヤコブはこの20 年の間、なにを考え、なにを思い、そしてどのように生きようとしたのでしょうか。レアやラケル、ジルバやビルハ(それぞれレアとラケルの召使いでヤコブとの間に子どもをなします)は、なにを考え、なにを思い、そしてどのように生きようとしたのでしょうか。
ラバンとヤコブの間には確かな信頼関係ができなかったことをこの物語は伝えています。命を助けてくれた人と、20 年もともに暮らし娘二人の夫となった人との間に信頼関係ができなかった。それはいったいどうしたことなのでしょうか。そしてヤコブはどうするのか。これらの事に思いを巡らしながら、ご一緒にこの物語に描かれていることを考えていきたいと思います。臼井一美

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