エレミヤ書33 章1-13 節
わたしを呼べ。わたしはあなたに答え、あなたの知らない隠された大いなることを告げ知らせる。(エレ33:3)
本日から「バプテスト世界祈祷週間」を過ごします。いわゆる「国外伝道」をおぼえ、海外に派遣された「宣教師」たちの働きを祈り、献金を捧げていくことが、永らくこの「祈祷週間」の眼目とされてきました。当初は、海外の「未キリスト世界」や「未信者」にキリスト教を「布教」したり、「非キリスト信者」をクリスチャンに「改宗」させる働きとして「宣教師」を捉えてきました。けれども、その「上から目線」の伝道理解は次第に改められるようになり、「国内から国外へ」という方向性も「双方向的」「相互交流的」に理解されるようになりました。そもそも「布教」や「改宗」という目的にしても、設定そのものが傲慢であったと知るようになり、異質な人々と共に「生きる」ということそのものを喜ぶ運動へと導かれていきました。
「世界で異質な人々が共に生きる」とはどういうことか。どうすれば良いのか。それに想いを馳せることは「世界祈祷週間」の大切な作業ではないでしょうか。とりわけ、「異質」な者同士が、その異質性を「敵性」として絶対的に固定し、対話の可能性を次々に切断し、紛争と戦争が広がり、連鎖していく「こんにちの世界」の中にあって、「世界祈祷週間」とは「世界を祈る週間」「世界で祈る週間」なのだと思うからです。
故中村哲さんは、アフガニスタンで医師として貧困に喘ぐ人たちへの医療活動に取り組み、やがて「緑の大地計画」を立ち上げて灌漑水路を建設し、広大な砂漠を緑の大地と肥沃な農地に蘇らせ、たくさんの人たちの命と暮らしの場を生み出しました。彼はナイフ一つ持つことなく、身一つでアフガニスタンの戦乱の農村に入り、武装を常識とする人々と話し合いながら信頼を得ていきました。その土地の言葉を覚え、長老に向かい合い、相手の目線で丁寧に話し合いをしていきました。その信頼関係がつながり、実りとなって「緑の大地」がほんとうに生まれていったのです。そうした向かい合いの日々を回想して、中村さんは次のように語っています。心に深く沈めたい言葉です。
「異質なものの奥に、その見かけの異質さを超えて普遍的なものを見いだす営みである。そしてひるがえって、その異質なものの奥に見いだされる普遍的なものから自己を見直す、そのとが面白くもあり、何か私を落ち着かせるのであった。」『中村哲思索と行動』上ペシャワール会2023 年 (吉髙叶)