2024年12月29日礼拝「危険と悲しみを身に帯びた人」

マタイ福音書2 章13-23 節

ところが、夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、ナザレという町に行って住んだ。(マタイ2:22)

【12/24 クリスマス・イブ礼拝メッセージより】
マリアに懐妊の知らせを運んできた天使ガブリエルは、旧約聖書の『ダニエル書』に登場します。とても不安定で人心が乱れていた時代の中で、神の為される正義を求め、「どうか、このひどい世界に、救い主メシアが現れますように」とひたすら祈っていたダニエルという若者のもとに現れて、「あなたの祈りは必ず聞かれるだろう」と約束し、励ました天使です。そのガブリエルが、歴史に再び突入してくる。それがナザレに住むマリアという少女のもとにだったのです。
ナザレという地域は、ユダヤ教徒と異邦人とが混在して暮らしていたゆえに宗教的に軽蔑されていた地域です。経済・文化的にもほとんど無意味とされ、「ナザレから何の良きものがでようか」と侮辱されていた地域です。富と権力と宗教抗争のせめぎ合いの中で、生み出されては捨て置かれていく難民キャンプのような、あるいは殲滅の標的にさせられていく現在のガザのような、そうした地域のことを心に留めながら、この「ナザレ」という地名を聞くべきかもしれません。
しかし、クリスマス事件の重要なことは、そのナザレの、ものの数に数えられない一人の少女マリアこそが、神が眼を止められた人間存在であったという事実です。マリヤは、貧しさと危うさを背負わされ、この世の力にいとも簡単に押しつぶされていく人間
象徴・代表です。しかし、マリアは、祈り求めている小さな人間の象徴でもあります。神の義と神による平和が到来し、この世の暴力的な力が打ち破られていくことを祈り求めている人間の象徴・代表でもあるのす。(ルカ1:46-55『マニフィカト』・マリアの賛歌)ガブリエルとマリアの出会いは、歴史を超えて、「生まれてくださいいのちの光よ」と願い続けてきた人々の祈りに、神が確かに応えてくださり、いのちの光を求めて生きる力を授けてくださることを表しています。マリヤがその胎内に平和の主、希望のしるしの生命を宿したように、この世の暗闇の中で喘ぐすべての人々に、神は勇気を届け、未来を仰ぐ希望の光を灯してくださるのです。
「生まれてくださいいのちの光よ」。イエスは、この光です。そして「イエスは復活であり、いのちです。」わたしたちの祈りを、闇は消し去ることはできないのです。吉髙叶

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