2025年9月14日礼拝「ひっくり返らない正義」

ヨシュア記3 章1-6,14-17 節

そうすれば、あなたがたの行くべき道はわかる。(ヨシュ3:4)

朝ドラ「あんぱん」がいよいよ佳境に入っています。「正義とは何か」。戦争の大義に翻弄された柳井嵩と妻・のぶが「何があってもひっくり返らない正義」を探しながら生きていく物語ですが、9 月11 日の内容は、このドラマの核心だったように思います。
ある日、「高知新報」時代の上司・東海林が東京にやってきます。嵩が描いた「あんぱんまん」の仕立てがどうしても腑に落ちないのだとつぶやいて、のぶに訊くのです。
「あのおんちゃんは、どういて悪者を倒さんが。どういてかっこよう空を飛ばん。どういてぼろぼろのマントを着ちゅう。どういて・・・。どういて柳井はあれを書いたがな。」のぶが応えます、「いつの日か、うちの人が言いよりました。『正義を行うなら自分も傷つくことを覚悟しなければいけない』と。子どもたちにあんぱんまんを知って欲しゅうて、なんべんも読み聞かせをしゆううちに、私なりに感じたことがあるがです。かっこよう銃を撃ったりして、敵と戦うがは真のヒーローではない、と。敵を倒してそのままかっこうよう飛び立ったら、めちゃくちゃに壊された町や、そこに住む人らはどうなるがですろ。強さを見せつけて敵を倒すがではなく、自分を顧みず、弱い人や困っちゅう人を救うがが、真のヒーローではないかなと思うがです。やき、あんぱんまんはかっこ悪くてえい。弱くてえい。マントもぼろぼろでえい。あんぱんまんは、嵩さんにとって唯一信じられる正義の味方ながです。」
「9.11」の朝にこの台詞(セリフ)が放映された意味を考えさせられています。2001 年9 月11 日。あの日を境に「対テロ戦争」という「正義」が世界に君臨し、大国が自国の利益に反する存在を「テロ」と定めて攻撃することが「正義」となりました。その「正義」は憎悪と報復の連鎖の渦に世界中を巻き込み、今日のような世界にしてしまいました。
カナン征服の様子を描く『ヨシュア記』は、シオニスト・イスラエルにとって「聖戦・正戦」の根拠に利用されています。しかし、バビロン捕囚期の編集者たちは、それまで自分たちが掲げてきた「正義」が正しかったのかどうか、「ひっくり返らない正義」は果たして何なのだろうか、と問い直そうとしたのだと思います。その答えは、その後の歴史の中で、更に掴みきれない問いとして残されていきます。そして、イエスの誕生。イエス・キリストの「勇ましく敵を倒さなかった姿」は、「ひっくり返ることのない正義」にまつわる、神の「歴史への回答」なのではないかと感じます。吉髙叶

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