2025年11月23日礼拝「主の日を操ってはならない」

ヨエル書1 章1-15 節

聖書の預言書は、その言葉が向けられた時代の具体的な不正義や堕落を断罪し、批判しています。その問題性が何であったかを見ていくことで、「警告」の中味を理解していくことができます。ところが、『ヨエル書』は、誰のどのような行いを批判し、何を断罪しているのかが不明な預言書です。ただ、「主の裁きの日が迫っている」ことを認識するようにと呼びかけている預言です。ですから、下手をすると「現世そのものを神が裁こうとしている」という解釈に陥ってしまう危険性を持っています。「この世界の終わりが近づいている」という熱狂的終末待望に拍車をかけてしまうのです。
アメリカ最大のキリスト教勢力といわれる福音派(原理主義的キリスト教)は、第二次トランプ政権を誕生させた勢力で、ここ数十年のアメリカ政治史にあって、政治・外交・軍事政策に大きな影響力を与えています。福音派の多くは、「パレスチナにユダヤ人の王国ができ、神殿が再建された後にハルマゲドン(最終戦争)が起き、キリストが再び再臨される」と真剣に信じています。そしてイスラエルが中東で引き起こす戦争・紛争を強く歓迎しています。全米で1000 万人以上のメンバーを擁する「イスラエルのためのキリスト教徒連合」を率いるリーダーで、メガチャーチの牧師でもあるジョン・ヘイギーの最近の説教のフレーズです。「世界の歴史上で、初めてすべての役者が舞台にそろった。
イラン、ロシア、中国、ヨーロッパ、アメリカ。何もかも、これ以上ないほどに完璧です。世界の覇権を争う戦争が、ハルマゲドンにつながるのです。イランよ、ロシアよ、よく聞け。神がお前たちを消し去るのだ」。こうした人々は、ハルマゲドンを待望するだけでなく、アメリカとイスラエルの関係を強化することで最終戦争(核戦争を念頭に置いています)を引き起こし、キリストの千年王国の実現を早めることを政治的プログラムにして運動をしています。このような人々にとって「ヨエル書」は、「終わりの日」に備えてサタンと戦う戦闘態勢に入るようにとの激励の書と理解されてしまっています。
聖書の預言や黙示の言葉を、現代の政治状況に強引に結合させる聖書の読み方は、このように危険極まりないものです。しかし、聖書の言葉が根底に持っている神の創造の想い、すなわち被造世界との調和、権力者による暴力支配の禁止、飽くなき利益追求の中断、弱者・寄留者の保護などの忠告に謙遜に耳を傾け、持続可能な社会や共生社会へと方向転換していく動機・励ましとして聖書を読むことは、とても大切です。そこに大切な分岐があることをわきまえて聖書を読んでいきたいと思います。吉髙叶

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