2023年10月1日礼拝「軍事同盟は平和を運ばぬ」

イザヤ書3 章8-15 節

お前たちはわたしのぶどう畑を食い尽くし、貧しい者から奪って家を満たした。(イザヤ3:14)

本日よりアドベントにかけて『イザヤ書』を読んでまいります。創世記「原初史」とのつながりがわかりにくいことでしょう。けれど、つながりが無くはありません。なぜなら、創世記「原初史」は、イザヤがユダ王国に対して「このままではアッシリアに翻弄され、果てには新バビロニアに滅ぼされてしまうぞ」と警告した預言が、ほんとうにその通りになってしまった後に、すなわち「バビロン捕囚」を経験した後に、「世界と人間」「神と人間の関係」を根源的に、また反省的に振り返ってまとめた物語だからです。
ソロモン王の死後(B.C.926)イスラエルは南北二つの国に分裂してしまったのですが、イザヤは南王国ユダで活動した預言者です。B.C.736 年ユダの王ウジヤが亡くなる年に神の召命を受けて歩み始め、実に40 年以上に亘って預言活動に従事します。イザヤが活動し始めた時代は、ユダ王国にとっては分裂後最も安定し繁栄した時代でしたが、同時に繁栄の陰にはひどい貧富の格差や拝金主義の風潮が根付いてしまった時代でもありました。他方、ちょうどその頃よりアッシリアのティグラトピレセル王は帝国主義的支配を開始し、他国へ進出し属国として支配するようになります。この動きに動揺した北王国イスラエルはアラム王国と反アッシリア軍事同盟を結び、ユダ王国にも同盟に参加するように迫りますが、ユダのアハズ王がこれに躊躇したため、双方の間で戦争が勃発します(シリア・エフライム戦争)。この窮地に及んでアハズ王はアッシリア帝国に貢ぎ物を送り、保護・助勢を頼んでしまいます。アッシリアの介入でユダは延命できましたが、結果として、アッシリアの強い影響下に置かれ、宗教祭儀も強要されるようになります。こうした一連の政治的画策の中で、イザヤは、「軍事同盟に頼らず、また経済的繁栄に拘泥せず、主ヤハウェのみに頼り、正義を貫き、孤児や寡婦等の社会的弱者を保護する政治をおこなえ」と軽挙妄動を戒め、神への回帰を訴え続けた預言者でした。
イザヤ書1 章には、イザヤが糾弾したユダ王国のひどい実態が記されています。また、たいへん示唆に富むのは、続くイザヤ書2 章には、かの有名な「剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」という理想が語り抜かれています。今日の日本の文脈で言えば、日米同盟の相手国に忖度し、格差社会を放置してでも軍事費増強に邁進している現実と、その反面、非戦の理想「憲法9 条」が葬り去られようとしている現実とが、ぴったりと重なるのです。吉髙叶

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