2023年10月29日礼拝「『帰還』からの生き方」

イザヤ書40 章1-8 

呼びかける声がある。主のために、荒れ野に道を備え、わたしたちの神のために、荒れ地に広い道を通せ。(イザ40:3)

イザヤ書40 章は無名の預言者(故に第二イザヤと呼ばれる)によって語られた預言です。かつてイザヤ(第一イザヤ)がユダ社会に対して放った警告は、神の審判を予告する厳しいものでした。そしてイザヤの預言通り、ユダは新バビロニアに滅ぼされ「バビロン捕囚」(B.C.597-)を経験したのです。それから60 年後、新たに中東世界の支配者となったペルシャ帝国キュロス王の勅令によって、ユダの人々は抑留状態から解放され(B.C.538)、エルサレムに帰還していきます。帰還といっても、多くの人々はバビロニアで生まれ育ちましたから、いわば「出発」です。しかも荒れ果てたままのエルサレムへの旅立ちですから困惑に満ちた「帰還」でした。第二イザヤは、そうした帰還民たちを慰め、励ますことを主眼に預言活動をした人物です。確かに第二イザヤの預言は励ましに満ちています。しかし、常に「再出発」に際して心に刻まねばならないこと、神と歴史の前に謙遜に生きることが呼びかけられています。
ユダヤ人の「帰還」。それは20 世紀に再び起こった世界史的事件でした。紀元70 年、ローマ帝国によって再びユダヤが滅ぼされて以来1900 年もの間、ユダヤ人たちはまとまった居住地を失い、各地へ離散して生きてきました。20 世紀に入り、ナチスドイツによるユダヤ人迫害とホロコーストという民族絶滅の危機をくぐり抜け、第二次大戦後に国際連合の判断によってパレスチナ地域は分割され、イスラエルが建国されました(1948年)。しかしそれは、すでに1000 年に亘ってその地に生きてきたアラブ人・パレスチナ人たちにとっては領土の60%を失う分割政策でした。さらに、「帰還」の後イスラエルが引き起こした事は、圧倒的な軍事力による領土拡大(中東戦争)と、国連議を無視したユダヤ人入植地・入植者の拡大でした。わずかな地域(ヨルダン川西岸地区とガザ地区)に押し込められ軍事封鎖された中を生きている、それがパレスチナ人たちの現実です。
2023 年10 月7 日早朝、ハマスによる突然のイスラエル攻撃は世界を驚かせましたが、それに対するイスラエル軍の報復は空爆による無差別なもので、ガザ地区ではすでに7000人に及ぶ人々が殺され、そのうち子どもの死者は3000 人にのぼっています。一ヶ月以内に出産を控える女性がガザ地区には1500 人いると言われます。神が怒られた「流血と叫喚」(イザヤ5:7)が地を覆っています。一刻も早くガザ地区への空爆を停止させ、イスラエル軍の地上侵攻を食い止める。いま、ただただそのことを祈りたいと思います。吉髙叶

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