2021年12月26日礼拝「慰められよ、べツレヘム」

マタイによる福音書2 章13-18 節

ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。そして、人を送り、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。(マタイ2:16)

救い主イエスが生を受けるために選ばれた町ベツレヘムは、ほんらい祝福されるべき町でした。それなのに悲劇と嘆きに包まれた町となってしまいました。占星術の学者たちの訪問を受け、「ベツレヘムに新しい王が生まれる」というミカの預言を知ってしまったヘロデ王がベツレヘムと周辺一帯の二歳以下の男児を皆殺しにしたというのです。どれほどの泣き声・叫び声がその地にあがったことでしょう。
こうした聖書の記述がクリスマスの報告に張り付いていることに、私たちは目をつぶってはならないと思います。エルサレムの主によるベツレヘムの蹂躙、それはまさしく今日なお続いている現実なのです。
ベツレヘムは、現在、パレスチナ自治区の中にあります。1993 年のオスロ合意以後、ヨルダン西岸地域とガザ地域にパレスチナ自治区が設けられました。しかし、その後もイスラエルによる入植増加政策により自治区はじりじりと狭められ、幾度となく(2 年おきに)なされるイスラエル軍による激しい爆撃、軍事進攻によって莫大な数の人々が犠牲となってきました。とりわけ2014 年の夏のガザへの大規模な軍事侵攻の際には450 人の子どもを含む2,200 人以上の人々が犠牲になったのです。パレスチナ自治区はイスラエルによってコンクリートや鉄条網の壁で囲まれ冷たく閉じ込められています。狭められ点在させられた自治区の一つ一つが壁で囲まれて隔離されています。エルサレムによるベツレヘムの蹂躙、パレスチナの子どもたちの虐殺は、いまも起きていることです。ヘロデの暴挙の本質は「恐れ」でした。自分に変わって新しい王が生まれることへの恐怖でした。手にした権力の座を手放さなければならない事への恐怖でした。そうです、暴力の正体は「恐れ」なのです。そして「暗闇」の正体もまた「恐怖」なのです。
今日、ヘロデの暴力はちまたに満ちています。不安が募り、恐怖心が膨れ、攻撃心が駆られて暴力を振るう。この社会でも、そこら中で「ヘロデたち」が人々を苦しめています。特に、女性や子どもたちが痛めつけられています。そのヘロデたちの背後に「ローマ帝国」という構造の力が横たわっています。イエスが生まれた時の世の様子は、そのまま私たちの社会(やこの世界のあちこち)の様子と重なるのです。暗い世(夜)です。
しかし・・・。だからこそ、ベツレヘムの星は、今も、暗い闇夜を照らしています。【吉髙叶】

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